お酒とビジネス

もしお酒を飲みながら仕事の話をしないべきと思うのであれば、中国に行かない方がいいかも知れません。お酒とビジネスを混ぜたくない人も多いようですが、中国では一般的にお酒とビジネスを分けることは出来ません。「お酒無しなら、ビジネス無し」と言っても過言ではないでしょうか。他の国では、お互いをより良く知り合うため、ビジネスの相手と一緒に食事をしたりすることがありますが、中国ではこれがかなり重要視されているのが真実です。

私が初めて中国に行った時は日本の経営者の集団の一員としてでした。幾つかの中国の市政府の招待で、それぞれの「開発区」を見学し、投資奨励の話を聞く内容でした。

私達のグループは日本からの6人程度の経営者でした。迎えに来るのは中国側の市政府の偉い方々で、開発区の責任者、そして数名の国際ビジネスをしている中国の会社経営者でした。私達の倍以上の中国人が迎えに来てくれて、最初はそれが歓迎の気持ちの表れだと思いました。空港から見学場所に行ったり、それからホテルに戻ったりと、その間はずっと公安局のパトカーが先頭となり、車で移動しました。

完全なVIP扱いに感じましたが、第一印象は良く外れますね。特に中国では・・・

最初の日はまだ開発途中の「開発区」に連れて行かれ、その後昼食に招待されました。私達6人に加え、12人くらいの中国人がいました。通常はその市の市長から工場の工場長までが出席します。ビール(運が良かったら、冷たいビール)にその地方の自慢の白い酒(白酒、baijiu)が出されます。これは35%から75%のアルコール度数で、味は「悪い」から「最悪」までです。

接待の場での礼儀は客側の一人ひとりが現地側の一人ひとりと1対1の乾杯をすることです。私達は6人で、彼らは少なくても12人です。つまり、1回乾杯することで、私達は一人12杯飲み、中国側は一人6杯。まるで「私達対彼ら」の競争です。それが不公平に聞こえるようなら、もう一つ知っていた方がよいかと思います。私達が地方の自慢な55%のまずい酒で一気飲みしている間は、中国側は2杯目からこっそりと水やお茶を飲んでいるのが当たり前です。この段階は、まだお昼御飯の話です。

その後、港などを見学してから、2時間ほどのセミナーがありました。確かに自分の言語(英語や日本語)に翻訳された書類を用意されますが、全く理解不可能の文字列であるのが普通です。これは昼寝のいいチャンスです。それが終わり、ホテルで30分程の休憩をし、午後6時半に再びお酒を交えた食事になります。

食事は通常、その地方の一番贅沢なものです。例えば、大きなナマコから蠍、揚げた虫、色々な正体不明なものばかりです。もちろん、それらと一緒にお酒を戴きます。ただ、今回はグラスがより大きく、乾杯の回数もより多いです。

食事が終わってから、普通は近辺のカラオケ店に連れて行かれます。そこは日本語が話せ、飲み物のサービス(温かいビールなど)を提供してくれます。

なぜそんなに飲む?

彼らはたくさん飲むと言うよりも、たくさん飲ませます。今まで色々な理由を聞きましたが、一番納得できるのは、人は飲んでから本当の自分を見せることが多いという理由です。中国人はビジネスをする前に相手の正体を確認したく、その一番簡単な方法は酔ってもらうことです。

実際に自分が飲んでいる席で体験したことは、中国側の人は何回も同じ質問をしてきたことです。言い方が違っても、質問は同じです。最初は相手も飲んでいるので、既に聞いていることを忘れたか、相手があまり賢くないか、と思っていました。しかし本当はまったくの逆でした。計算の上、賢く質問をしていました。ある日について聞きます。それはいつだった?その当時は何歳だった?それは何年前?今は何歳?相手はもちろん、飲む前と酔ってから同じ答えが来ることを確認しています。真実を伝えているのであれば、全く問題ないことです。

お酒を避ける方法

基本的には不可能です。初めて会う時に全く飲めない(飲まないではなく飲めない)ことを明確にしない限り、社会的なルールに従って「少しだけ」を飲むことにはなります。その「少しだけ」が、「もう少し」になり、あっという間に「たくさん」の意味になります。最初の乾杯で、一滴でもお酒を飲むと相手は「飲める」と判断し、その後避けることは出来ません。

もちろん、お酒を断ることも選択肢の一つですが、相手のお酒を断ることは相手のビジネスを断ることと等しいことになります。

通訳者

市政府の接待の際、若い女性が通訳者として同席します。良くあるのがその女性は乾杯の際にお酒をすべてを飲み干せません。その為、自分が「紳士」として、隣の女性を助けることを期待されます。白酒が苦手な女性の場合、赤ワインを頼むことがあります。女性が赤ワインを頼んだとしても、結局自分で飲むハメになるのが普通です。結果的には、自分が温かいビール+55%の白酒+赤ワインをすべて一気飲みすることになります。

要約

上述の付き合い方が数年続き、最初はただの「外国からの来客」でしたが、それが「取引先」になり、「友人」となった今では、お酒の量が急に減りました。

市政府の方とお昼を共にした時には、「飲まなくていいよ」と言ってきます。食事に誘われ、既に予定があることを伝えたら、お茶だけで済ませることが出来ます。

中国人は相手のことを「10年後にもこの人と付き合えるか?」と見ます。

一方、日本人は目先の取引でどのくらいの利益を得られるかを計算しています。

全然違う考え方であり、習慣です。

私は中国の考え方の方が好きです。

ただ、好きなのは、その「考え方」だけであり、「お酒の好み方」ではないことを強調します。

コメント / トラックバック1件

  1. wakame より:

    社長なら、大丈夫でしょう?
    お酒好きだからね。

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