大家とのいざこざ – その1

今までブログが更新できなかった理由を書きます。

ある出来事から始まり、ふたを開けてみると3週間が経過し、今なお継続中で、もしかすると裁判沙汰なんてことになるかもしれない。今は様子見といったところでしょうか。詳しいことまで書くと終わりそうにないので、どうして中国のオフィスを引っ越すことになったのか(それも全く離れていない1階下の部屋!)、ここではそのあらましを紹介するにとどめておきます。

8月2日、オフィスに入ると、キッチンから漏れてきた水が私の机の位置にまで達していました。その距離約5m。タイルカーペットは水浸しでキッチンの床は完全に浸水。すぐに水道栓を閉め、従業員に大家と連絡を取るよう指示してから、モップで床の水を拭き取り、濡れたタイルカーペットを乾かすため、一枚一枚剥がしてベランダに出しました。

大家は部屋に入ると、破裂したシンク下のパイプを取り換えるようすぐに手配をし、後始末は私たちに託すかのようにして、あとは何もせずに部屋を後にしたのでした。

2日後、タイルカーペットが乾いたので、ボンドを買ってきてそれらを元の位置に貼り直しました。私の机やコンピューターもやっとのことで定位置に戻り、日常の平穏を取り戻すことができたように思えたのです。

ちなみにオフィスには複数の部屋があり、全体の面積は160m2です。その日の午後、キッチンから離れたいくつかの部屋のあちらこちらで、カーペットに水が浸みているのを発見しました。その理由を数少ない選択肢の中に探ってみるまでもなく、水は床下に拡がっているのでしょう。それも多分、その裏面と接するほどの深さでもって・・・

私たちは急いで大家に連絡をし、再度、部屋まで来てもらいました。大家はその現状を確認して曰く、「2、3日もすれば乾くと思うし、いずれにしても出来ることは何もないですね。」いやいや、そんなことはないだろう、床下には水があるはずだし、どんなにエアコンをかけたって湿度は高くなる一方だし、ほっておくとカビだって生えるかもしれない。でも大家は言うのです。少し時間をおいてください。今のところ待つ以外にできることはないんです、と。

あくる日、水の浸みはカーペットから上って壁まで拡がっていました。このままだとカビの繁殖は必至です、と大家に電話で告げると、やっと彼も重い腰を上げ、何か考えておきますから、そちら(つまり私たち)も方法を考えてください、と言ったのでした。

木材のフローリングに穴を開けさえすれば、水の量も分かるし、それを吸い出すこともできる。私たちは大家に説明をして、穴を開けることにしました。友人から電動ポンプも借りました。そうして人を呼んで直径3cmほどの穴を開けてもらったのです。

はたして水はありました。数か所に穴を開け、その深さを測ったところ平均1cmほどはありそうでした。1cmの深さで160m2、つまり約1,600ℓ(1.6 ton)もの水が私たちの足元に広がっているんです。しかしこのニュースにも大家は動じる気配を見せず、ポンプで吸い上げるだけ吸い上げたらあとは蒸発させるしかないですね、と言ったきりでした。

とにかく作業開始です。最終的に10ヵ所になった穴からの吸い上げ作業を2日続けて、量にして約700ℓもの水を吸い上げました。それでもポンプでは吸い上げることのできない2mm程度はまだ残ったままです。

その晩、私が一人でオフィスに残っていると不動産屋の人が、階下の部屋の天井から水が漏れているが何か水の問題がないか、と訪ねてきました。彼と一緒に階下に行ってそのアパートに入ると、部屋の一つの天井は水がかなりの勢いで漏れており、隣の部屋の天井にもその影響が見て取れました。私は彼に、彼からもらった名刺の連絡先へ大家に連絡をさせるよう約束しました。

水道管が破裂してから約1週間、週の内の4日間を無駄にし、その間に、予想通り壁のあちこちにカビが繁殖をはじめていました。そしてまた大家に連絡をし、大家もまたお決まりの「蒸発」ですべてを解決しようとしました。加えて20mlの注射器を持ち出し、こともあろうに残っている分(約300ℓ)はこれを使えばいいなどとのたまったのです。

数日後、カビの繁殖の勢いは増すばかりで、もちろん床下の水が短期間に蒸発するなんてことはないわけで、このまま水の処理が出来ないようであれば、オフィスの引っ越しを考えると大家に告げました。大家もここにきてやっと現実的に床の取り外しとその回復の方法を考えるといい、1、2日待ってくださいと返答してきました。

ところが2、3日たっても大家からの連絡は来ず、電話でどういうつもりなのかを再度、確認しました。彼の提案は、まず一時的に階下のアパートに荷物をすべて移す。フローリングを取り外し、水を完全に除去する。その後、床の修復。それらが終わって最終的にまた荷物を戻す。すべてが終わるまでに約3週間。どう考えたって3週間も会社を休ませるわけにはいかないし、それは最初からはっきりと明言してきました。それに荷物を移して戻すというのは、つまるところ引っ越しを2回するようなものだし、何よりもアパート内を分割してオフィスと住居にしているため、その間、私は住むところを失ってしまいます。しかし大家によると方法はそれしかないのです。

大家は私たちに出ていってほしくはないだろうけれども、フローリングを取り外さない限り水は除去できない。オフィスの引っ越しを考える地点に来ていました。カビは日を追うごとにその範囲を拡大しているし、ただ「待つ」というのはもはやオプションでさえないのです。

その日の午前中に下の階のアパートを借りることが出来るか、不動産屋に電話で聞いてみました。私たちの計画は、階下アパート内で比較的水漏れ被害の少ないオフィス部分を先に移動し、被害の大きい住居部分については天井の修復が終わってから移動するというものでした。運よくアパートの所有者からの同意を得ることができ、その日の午後には契約まで済ませてしまいました。そして次の日には一年分の家賃を支払い、2、3日後には移動できるようにオフィス用の配線工事も開始させました。

オフィス部分は金曜日に移動し、住居部分の天井修復は土曜日に、翌週月曜日には人を呼んで部屋の掃除をしてもらい、すべてが終わったのは月曜日の晩でした。

引っ越しは予想以上に順調に進み、残すは以前の大家とのアパート解約、つまりは鍵を返却し、前払い家賃の残高(8ヶ月分)を返済してもらい、居住者側(私たち)の中途解約による違約金(1ヶ月分)を支払うだけとなりました。金額にして37,498 元(14円のレートで520,000円です)が返ってくる計算になります。

しかし大家は私たちが新しいアパートの契約を済ませ、すでに引っ越したことを知ると態度を変え、すぐに水を除去すると言い出し、フローリング交換の代金を私たちに要求してきました。彼の配水管が破裂して、その床下に水をため、蒸発するまで待つしかないと言い続けてきたにもかかわらずです。

2人の弁護士、それに不動産屋ともに、私たちにフローリング交換および水除去の代金の支払い義務はなく、前払い家賃残高の受け取りの権利もあると説明してくれました。ただし、そんなことは意に介さず、以前の大家はただただ私たちの引っ越しに腹を立て、家賃残高の返済を拒み続けています。

現状、私たちは法的には引き続き前の部屋も借りています。つまり大家は私たちの許可がない限りは勝手に部屋に入って修理を始めることはできないわけです。その間にもカビの増殖は止まりません。それに、いずれにしても解約のために事前にアパートの鍵を取り換えていたため、彼は鍵も持っていません。

それでも大家は自分の所有物ということをたてに、鍵屋に鍵を開けさせ、自分のやりたいようにすると言い張っています。これは明らかに違法行為ですが、彼は折れようともせず、家賃残高の半分さえ返済する意思も見せず、そもそも基本的にこの話し合いを終わらせることをさえ拒否しているように見えます。

いずれにしても新しいオフィスへの引っ越しは終わりました。以前の部屋に比べると住み心地ははるかにいいと思います。それから解約手続きをするか、もしくは必要があれば裁判になるか、どちらにしてもその準備は整っています。ただし、裁判の時間と費用を考慮すると、現実的には大家に鍵を返却せずに、様子見を続けるしかありません。仮に大家が鍵を壊して無断で部屋に入るようなことがあれば、警察を呼ぶかもしれませんし、そのときこそ裁判を起こすかもしれませんが、こちらの日本人や現地の知人の話では、それでも大した改善は見込めないだろうということです。

今回の件を通しての大家の態度の変化が不思議でなりません。彼は私たちが部屋を借りていた2年半の間、とても素晴らしい大家でした。そして解約申し出の瞬間には別人になっていました。

最善と思われるのは、今回の事件をちょっとした異文化経験と思ってあきらめ、新しいオフィスで今まで通り仕事を続けていくことかもしれません。住所だって903が803になった程度です。それにしたって登記住所の変更、銀行や関係機関への届け出など、まだまだ片付けなければならない書類は山ほど残っていますが…

. . . 続く . . .

コメント / トラックバック5件

  1. バイオ より:

    はじめまして
    福山在住のフリーランス翻訳者バイオです。

    いつも楽しくブログを拝見させて頂いておりますが・・・
    今回は大変ですね。

    1点訊きたいのですが、
    なぜ法人化されているのですか?
    社長さんならフリーランサーとして相当稼げると思いますが。
    法人化を実現した、または法人化を目指している人は少なからずいるのですが、
    法人化の理由について納得のできる回答をもらったことはありません。
    今回の水漏れの件もそうですが、雑用が飛躍的に増えると思うのですが。
    純粋に翻訳を楽しみたいのならフリーランサーの方がずっと楽しいと思うのです。

    宜しければご回答ください。

  2. スプライン より:

    これですか、、憤慨の原因は、、。災難でしたね!
    それにしても、「手のひらを返す」というのは正にこのことですね!
    遊びに行きたくなりました。

  3. ハイマン より:

    今回の水漏れの件は個人か法人は何も変わらないと思います。

    法人化する理由は様々でしょうね。私の場合は翻訳以外のこと(時に印刷)に興味があって、更により多くの顧客の要望に応える為に色々の専門分野で活躍している翻訳者と協力し、より良いサービスを提供したかったです。
    更に法人になったら、自分が休んでも顧客に迷惑を掛けずにサービスを継続的に提供が出来ます。
    自分だけの利益を考えるのではなくて、顧客の立場、社員の立場、協力して頂いている翻訳者の立場から考えると視野が広がると思います。
    私は翻訳会社の社員、フリーランスの翻訳者、会社の経営者の3つの立場を経験して来ましたので、それぞれの良い所を理解できます。どれを選ぶのは人生の選択肢の一つだと思います。私にとっては、この道を選んで、今のところは後悔はしていません。

  4. バイオ より:

    今回の水漏れの件は個人か法人は何も変わらないと思います。
    →法人化すれば信用のために事務所が必要になるでしょうから。水漏れによる災難の遠因が法人化にあると思ったわけです。

    ハイマンさんは私を含めた多くの日本人より日本人的に思えます。
    日本人が忘れている「和」を感じさせます。

    私自身、「情けは仇になる」とよく自分に言い聞かせて仕事をしています。
    仕事相手に対しても、自分自身に対してもです。
    殺伐としていますが、今の傾向です。

  5. ハイマン より:

    「法人化すれば信用のために事務所が必要になる」と言うのは単に見せ掛けですね。
    私の場合は信用の為ではなく、社員が勤める場所やお客さんと打ち合わせが出来る場所が主な理由でしょう。

    個人で働く、信用の為に法人化するということよりも、
    家と仕事をはっきりと区別する為になると思います。

    弊社の顧客の多くは上場している大手会社です。
    個人で事務所を構え、翻訳をしているとしても、お客さんが仕事を依頼するとは思わないです。
    お客さんは、仕事そのものを評価するでしょう。
    社員の多い法人で自社ビルがあっても、納品する翻訳や印刷物が
    顧客が期待する品質でなかったら、依頼は来ないでしょう。

    事務所があるから仕事を依頼するお客さんは少ないと思うし、
    いたとしても弊社が望んでいるような顧客ではないのは確かです。

    最後になりますが、水漏れに関しては事務所でも自宅でも変わりはないと思います。
    事務所は確かに災難でしたが、少なくても、家に帰ったら普通の生活が出来ます。

    それが家だったら・・・

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