安全?

不正確に使われている、もしくは間違った文脈でよく耳にする日本語の言葉に「安全」と「安心」があると思います。これは日本だけに限ったことではないと思いますが、空港でのセキュリティ(安全)・チェックを例に挙げてみましょう。

空港でのセキュリティ・チェックがどれほどの安全を保障してくれているでしょうか?ここ数年来のセキュリティ・チェックの厳しさは凄まじいものがあります。X線検査を通すときにはコンピューターをバッグから出さなくてはいけない。液体は一定量、もしくは完全に持ち込み禁止。靴を脱がなくてはいけない所もあるし、X線検査の後には金属探知機まで。

これで我々が安全でしょうか?

そうとも言えないんです。

液体を機内に持ち込みたいとするでしょう?であれば、ポケットに液体を入れればいいんです。金属を身に付けていない限りは、金属探知機を難なく通り抜けることができるうえに、笑顔で送り出してくれます。この場合、水銀は例外ですけど!(笑)

金属について言うと、デジタルカメラが世を席巻する以前にはよく見られたX線フィルムバッグを覚えていますか?内側に張られた鉛がX線を防ぎ、フィルムを守ってくれるあのバッグです。効果のほどはというと、モニターを見ながら近くの人と話しこんでいるか、今にも寝てしまいそうな検査員には、検査中の荷物内に空白があるように見えるはずです。その中にだったらフィルムをはじめとしてピストルからナイフまで・・・なんだって入れることができますね。

仮にX線検査員がまじめに働いている場合は、もしあなたが刃物になりうるものを所有していた場合、それら(ポケットナイフはもとより、爪切りなども含め武器になりそうなもの全部)は没収の憂き目にあうでしょう。そしてこれらはすべて、並んでいる他の乗客の目の前で行われます。これとて彼らに安全になったという気分を与えているにすぎず、安心感を与えているという方がより正確だと思います。

しかしながらセキュリティ・チェックを通ってしまうと、そこには免税店があり、液体、刃物、ガラスなど、セキュリティ・チェックであれば没収されるような品々も、ここでなら購入することができるというわけです…

さて、搭乗も無事終わり、目的地に向かって飛行機が飛び立ちました。航路において問題になりそうなものは、効果的でひどく骨の折れるセキュリティ・チェックによって一掃されたはずです。機内では客室乗務員がボトルからワインを注いでくれたり、缶に入ったビールやソフトドリンクを提供してくれます。もしあなたの席がビジネスクラスであれば、料理を楽しむために金属製ナイフやフォークも食事についてくるでしょう。

あなたは当たり前のように金属製ナイフを手にし、ウォッカのボトルを持ち込んで、ねじり切ったらすぐに刃物になるようなアルミ缶を目の前にしています。あんなに膨大な時間とお金を使ったあのセキュリティ・チェックは何だったんだろう、と考えざるをえませんし、ひいては機内においてどのくらい安全であるかということにも疑念が生じます。

このように見てみると、プラスチック爆弾や水に溶けると有毒ガスを発生するような少量の粉末といったような危険物がどこでチェックされていることを考えるだけでも恐ろしいですね・・・

結局「安全」よりも「安心」が重視されているでしょう。

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